【それは甘い20題】04.おはよう

04.おはよう

気温が下がるよりも上がる頃。
小さなきらめきが大きな輝きに打ち消される頃。
柔らかに落ちるよりも太陽が眩しく登る頃。
俺は朝が苦手だ。
職業柄、朝昼夜という概念がないのだから致し方無い。
元より夜型人間だったという点も、要因の1つではあるのだが。

それでも、俺は朝が好きだ。どんなに夜が遅くても、早起きをしたいと思うほどに。

コーヒーメーカーが独特な歌声を披露し始め、目の覚める臭いがしてきた頃。
バサッ。ドタン。ガタタッ。
寝室から大きな物音がする。と同時に扉が大きく開いて。

ばっちり二重で長めのまつ毛。
メイクなしでもその眼力は圧倒的で。
けれど視線を彷徨わせ、眉間に皺を寄せながらも眉尻が下がったその表情といったら。

口角が、上がる。

「おはよう」
「お、はよう」

視線が合致する。
ずるずる、とスレンダーな体を扉に添わせながら座り込む彼女。
髪はボサボサ。目頭だけがキラキラと朝日を反射して。

夢じゃない。ちゃんと、一緒に寝た。
いまいち焦点を結ばない瞳で、声にならない声で、存在を確かめる。
俺は今、溶け気味なフィンガーチョコレートのような目をしているに違いない。

出向から、帰ってきてからやめられないでいる。
どれほど俺が帰ってくることを心待ちにしていたのか。
それほどの不安や寂しさを、誰にもぶつけず一人で抱え続けた苦しみとはいかほどのもだったのか。
俺がいない間も、ささいな生活音を耳にする度に慌てて探していていたのか。

1秒でも。
あなたのことを考えたら、責任とか立場とか。
諸々のしがらみ全てを放り出して。
泣きついてしまいそうだった弱く、白状な俺には想像もつかない。

会社の奴らに、見せてやりたい。
皆に“サイボーグ”とまで言わしめる彼女のこの姿を。
高嶺の華だと言われ続けたが、俺と付き合い出したことで触手を伸ばそうとしている奴らに。
―もちろん、思うだけだが。

俺だけの、可愛いうさぎ。
でも寿命を縮められては困る。
今日は休みでしょう。俺も、休みだから。
ゆっくりと、でもしっかりと。
そのカラダに愛を、染み込ませてあげる。

【それは甘い20題】04.おはよう

【確かに恋だった】より[それは甘い20題]
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